熱量の高いユーザーが積極的に参加してもらえたという定性的な結果こそが、この施策におけるなによりの成果かもしれません
株式会社サムザップ
プロダクトマーケティング室 室長
原田隆太 様(写真右)
プロダクトマーケティング室 『このファン』プロモーショングループ リーダー
運上雅展 様(写真中央)
プロダクトマーケティング室 『このファン』プロモーショングループ プロモーションプランナー
西村季里子 様(写真左)
”原作ファン”ファーストの徹底
一本日はよろしくお願いします。 「このファン』 は、 リリース当初から原作を忠実に再現した演出や、ゲームシステムなどで話題を呼びました。 開発側の方針はみなさんのほうで伺えしれないと思いますが、はじめてプレイした際の印象はいかがでしたか。
原田 : 驚きましたね。 というのも、 原作でもいじられているネタを、 ゲームバランスそっちのけで、そのまま踏襲するのは、なかなか出来ることではありません
たとえば、 クルセイダーだけど、 攻撃が当たらないキャラクターであるダクネスは、ゲーム中でも極めて命中率が低い仕様になっているほか、アークウィザードであるめぐみんは爆裂魔法を放つと戦闘不能に、アンデッドエリッチーであるウィズは回復スキルでダメージを受けるなどなど・・・・・・。 最初は心配していましたが、いざ蓋を開けてみたら、 ユーザーからたくさんの反響が寄せられてよかったです。
■『このファン』について
本作は、シリーズ累計発行部数900万部を突破したライトノベル 「この素晴らしい世界に祝福を! (以下、このすば)」 初のスマートフォンゲーム。 原作の「このすば」 は、 ライトノベルを皮切りに、 漫画やドラマCD、 TVアニメ (第1期・第2期)、
アニメ映画が公開されるなど、メディアミックス展開が盛んなタイトル。 癖のある登場人物たちは数多くのファンからも支持されて、異世界コメディの決定版として現在も人気を博しています。
ゲーム版では、原作でお馴染みのカズマ、 アクア、 めぐみん、 ダクネスなどが登場するほか、ストーリーは全編フルボイスの豪華仕様。 RPGとして、 パトルはシンプルかつ奥深いリアルタイムコマンドバトルを採用しています。 バトル中はSDキャラがコミカルに動くほか、 迫力のスキルアニメーションも魅力。 なお、 前述しているキャラクターたちの仕様に関しては、TVCMのクリエイティブでも採用。
―そのコンセプトは、やはりマーケティング戦略にも反映されたのでしょうか。
運上:そうですね。 まずリリース前は、社内の「このすば」 ファンに作品の魅力などをインタビュー。
そしてリリース後に改めて、プレイしていただいているユーザーのインサイトやドライバー、バリアなどの仮説を立て、それら仮説検証のために定性調査を行いました。
定性調査では、プレイしていただいているユーザー数名にオンラインインタビューをして、 先程の仮説検証と、今後のアップデートやプロモーション内容など求めていることをインタビューし、 今後の運営、プロモーション方針の参考にしました。
原田:また、リリース直後にはゲーム内のお客様アンケート (定量調査) も実施しました。 これは実際にプレイしていただいているユーザー層について、想定していたターゲットと乖離があるかや現状のプレイ状況などを知ることを目的に行いました。 結果として、 回答していただいた9割以上が原作を知っている、いわゆるファンの方々が中心であり、 リリース前に想定していたターゲットと同じであることが分かりました。
―リリース前後の調査結果を経て、マーケティング戦略にも変化はありましたか。
運上:リリース前の調査で原作ファンに伝えるべきことと、その順序が明確になったことは大きなメリットでした。 ファンが求めていることに、 「世界観再現度の高さ」 がありましたので、ここをコンセプトに据えてマーケティング施策を企画していったのです。
また、リリース前のオリジナルキャラクター発表のタイミングは社内で吟味しました。 IPタイトルのため、やはり原作を忠実に再現していることに期待が寄せられています。 当然、 オリジナルキャラクターが追加されたことで、 一部のファンも喜んでくれますが、 その情報の出し方を見誤るとマイナスな印象を与えてしまうおそれがありました。
そのため、オリジナルキャラクターの情報公開では、「世界観再現度の高さ」 が一定リーチした、事前登録開始3ヵ月後の公式生放送にて発表しました。原作ファンは、きちんと世界観が再現されていることを理解しているので、オリジナルキャラクターの発表も安心して受け入れられたのだと思います。
―なるほど。一方でTwitterの情報発信も積極的ですね。 個人的にプロモーションやフォロー&RTキャンペーンだけではなく、 小ネタをはじめとするユニークな投稿も印象的でした。
西村: Twitterでも 「世界観再現度の高さ」 を訴求し、アニメやライトノベルファンが拡散したくなるような設計をチーム内で考えて発信しています。 また、 ギャグ要素を含んでいる作品のため、ユーザーがツッコめる余白を残した企画を展開し、 Twitter上での盛り上がり感を演出できるように心がけました。
西村: そもそも 『このファン』 ユーザーは、SNS好きな方が多いですね。 おそらくゲームもツッコミ入れながら楽しんでいると思いますが、 マーケティングの面では”ゲーム外のコンテンツ”として楽しんでもらえればと思い意識しました。
たとえばクイズ 「このファンQ」 では、フォロワー数を増やす施策としてだけではなく、純粋に『このファン』らしさを訴求するために、 原作のストーリーを知っている方向けの問題を作成しました。 そういう意味では、ややマニアックな問題でしたが、こちらもリプライ欄に好意的なツッコミが多く寄せられました。 クイズは5ヵ月間の長期に渡って開催しましたが、 合計のコメント数は9,000、いいね数は1万にも及びました。
―『このファン』では、ユーザー同士で繋がりを作るマーケティング施策も展開されていました。
原田:はい。リリースから2ヵ月が経過した2020年5月に、 「Rooot」 (提供: ドリコム)というサービスを活用してキャンペーンを展開しました。
―Rooot活用の経緯について教えてください。
原田 : 2020年4月末~5月中旬にTVCMを放映していました。 リリース当初から遊んでいる既存ユーザーと、TVCMきっかけで始めてくれた新規ユーザーが繋がれる施策として機能してくれればと思い、Roootの活用を決めました。 また、 SNS上で繋がりを作れるというサービス思想にも共感しました。
―"ユーザー同士の繋がり”はゲームにとっても寄与すると。
原田:はい。とても重要な指標です。運営とユーザー(ファン)の関係値も当然重要ですが、 「ファン⇒ファン」の繋がりがあるからこそゲームを継続的に遊んでくれたり、コミュニティを形成して、それらがサービスを支えてくれたりするものだと考えています。
それに施策を実施した当時は、まだゲーム内にフレンド機能が実装されていなかったり、 コロナ禍でリアルイベントセ惟できなかったりと、なかなかユーリー回工が父できるようなンステムで場所を旋供できなかったことに、 もどかしさを感じていた時期でした。 そういう意味では、 Roootがその課題の一端を解決してくれたと思っています。
―Roootを活用した施策は、 具体的にどのような内容でしょうか。
運上:施策名は「#このファン好きと繋がろう Twitterキャンペーン」です。期間中に、Twitterで「#このファン好きと繋がろう」 のハッシュタグがついたツイートに「いいね」、 「RT (リツイート)」 をすることで 「繋がりP」 を獲得でき、 ゲーム内アイテムと交換することができました。 ちなみに1日の 「繋がりP」 の上限は20Pまでです。
―ゲーム内アイテムにはどのようなものを用意されたのでしょうか。
運上:強化素材やスタミナ回復アイテムはもちろん、ゲーム内通貨のクオーツ、 限界突破に必要な伝説 の聖杯、さまざまなアイテムと交換できる女神メダルなど、 ゲーム内でも希少価値の高いものを揃えました。 2回目に実施した際には、 フィギュアの応募券を貰えるなどリアルインセンティブも報酬に設定したことがあります。
―上限が20Pとのことでしたが、だいたいみなさん上限までRTやいいねをやっていたのでしょうか。
運上:具体的な数字までは申し上げられませんが、 30%近くの人は上限までやっていたかと思います。さらに上限を超えてまでもやっていた方は10~20%ほどです。
「運営⇔ファン⇔ファン」を意識した施策
―Roootを活用して、どのような成果がありましたか。
原田 : 5月に実施した 「#このファン好きと繋がろう」 キャンペーンは、 Twitterのトレンドで国内2位・世界19位を8時間以上ランクインしました。 ツイート数は3万近く、リツイート数は30万以上、いいね数は160万以上を獲得することができました。 また、 参加したユーザーの40%以上がフォロワーの増加に繋がりました。
―ユーザー同士が繋がる”という当初の狙いが数値にも表れたのですね。
運上:そうですね。 認知度が上がるという我々のメリットも当然ありますが、 なによりユーザーからは 「いつも以上にリツイートやいいねが貰えて嬉しい」 という声が多くあがっていました。
おそらく最初はインセンティブ欲しさでリツイートやいいねをすると思いますが、よくよくリツイートした先のユーザープロフィールを見てみると 「ゲーム内ランキングで見かけた○○さんだ」 「このプレイスタイルは私と合いそう」 など、 その後の交流にも繋がるきっかけにも寄与したものだと考えています。
原田:こうした熱量の高いユーザーが積極的に参加してもらえたという定性的な結果こそが、この施策におけるなによりの成果かもしれません。
―SNSは承認欲求が根源にあると思いますが、 それだけではなく、フォロワー増はゲームを続けるひとつの理由としてユーザーを支えていくものだと思います。
西村: はい。それに期間中は、ユーザーが積極的に 『このファン』 に関するツイートをしてくれて、「みんなでこのファンを盛り上げよう」 という一体感があったのも印象的でした。 Twitter上にもポジティブなツイートが溢れて、それを見た開発メンバーたちのモチベーションアップにも繋がるなど、本来のKPIとは異なる効果が社内にも波及していきました。
―施策のひとつでしたが、開発陣にもいい影響を与えたのですね
西村 : キャンペーン専用のハッシュタグをクリックすることで、ユーザーからのコメントや盛り上がっている様子をキャッチアップできるので、 今後における開発や運営の指針にもいい話題を提供できたのかもしれません。
運上 : 我々マーケターが企画する施策は、当然ユーザーに届けるものですが、 その反響をきちんと開発運営側にも共有するものだと考えています。 だからこそ 「運営 ファンファン」 の繋がりを今後も意識する必要があります。
―いいですね。
西村:あとはキャンペーン終了後からは、 Twitterのアカウント名のあとに 「@このファン」を付けた方が増えていました。 名前に○○ (ゲーム名) を付けるのは、 「このゲーム専用のアカウントとして呟いています」 という意思表示でもあります。 おそらくこのキャンペーンをきっかけに、「今後も交流したい」というユーザーのマインドを変えることができたと思っています。
―なるほど。 キャンペーン中はもとより、 その後も効果が発揮されるのは強みですね。 この施策は回を重ねるごとでさらに効果を生み出しそうですが、 その後も実施しているのでしょうか。
原田:はい。すでに第2弾は2020年10月にコラボ施策のタイミングで、そして第3弾は1周年の2021 年2月に実施 (関連サイト) しています。
一分かりました。 それでは、最後に読者へメッセージをお願いします
運上 : おかげさまで 『このファン』は2021年2月27日で1周年を迎えることができました。 本当にありがとうございます。
ゲーム内では、1周年を冠としたさまざまなキャンペーンやイベントを開催しています。 また、今後のアップデートでは、待望の新プレイアブルキャラクターが追加されたり、 本作の魅力のひとつLive2Dの演出がさらに磨きがかかったりと、ユーザーが楽しめる要素を準備しています。
そして、Roootを活用したキャンペーンも2月28日から実施していきます。1周年という節目のときに、三度Twitter上で 『このファン』 の盛り上がりとユーザー同士の繋がりを形成できればと思います。
――ありがとうございました。